生きるを伝える                 高橋 絵麻氏

こんにちは。髙橋絵麻と言います。福井県在住、37歳。3歳と8歳の娘が二人います。現在、ヨガスタジオ「Living space Atha.」を運営しながら、福井県を中心に乳がんの啓蒙活動、講演などを全国各地でさせて頂いています。

実は3年前まで私は、家事に育児に奔走しつつ、ヨガインストラクターという仕事も楽しみながら毎日を過ごす、普通のお母さんでした。でもある日突然、私の見えている景色がガラリと変わったのです。

それは、乳がんになったということ。

今回は私のこれまでと病気の経験、そしてその中で抱いてきた思いについて書いてみたいと思います。

身体の異変に気が付いたのは、次女を妊娠していた2015年5月。臨月でした。こんにゃくのような感触の大きなしこりが右胸にあり、チクチクと痛みがあるのです。

長女の時に乳腺炎を経験していましたが、何か違和感がある。必要な検査はしたものの、先生より「乳腺炎かがんか見分けがつかない。あんまり聞いたことがない事例なので大丈夫でしょう。」と言われた言葉を信じ、それ以上の検査は受けませんでした。

翌月、次女が元気に誕生し、5年ぶりの授乳が始まりました。すると右側の母乳に血が混じっているのです。久々の授乳の影響だろうとの先生の見解。1ヶ月検診でも相談しましたが、やはり先生の反応は同じものでした。今思えば、自身の直感を信じて精密検査を受けるなど動くべきだったのかもしれません。しかし、授乳中の幼いこどもを家族に預けてまで、時間のかかる総合病院を受診するという判断にはならなかったのです。

でもやっぱりおかしい。次女が3ヶ月になった頃にやっと先生に紹介状書いてもらい、総合病院でマンモグラフィーやエコーなどの検査を受けました。

そして、2015年10月、次女を連れて病院へ向かいました。

「お母さん、残念です」

この一言で、見える世界が一変したことを、今でも覚えています。

後の検査でわかったのですが、このとき、右胸の腫瘍の大きさは、すでに4×6センチになっていました。また、皮膚や大胸筋、脇のリンパには2個の転移があり結果はステージ3a。普通に過ごせることが幸せだったんだな…そんな風に思うと、何をしていても泣ける自分がいました。

告知された当時なにより辛かったのは、次女の断乳でした。おっぱい欲しさに泣き叫ぶ次女。抱っこをするとおっぱいを探してしまうため抱っこもしてあげられない。次女の鳴き声を聞いて、長女(当時5歳)も泣く日々。私だって泣きたい。どこにもぶつけようもない苦しみの中、何もかも投げ出したい状況でした。

そのような生活の中でも、ひとつの支えになっていたのは同居していた義母の存在でした。実は義母も乳がん罹患者ということもあり、どのように治療が進んでいくか、副作用との向き合い方など気軽に相談できる、よき理解者でした。なにより、乳がんに罹患し、今年で18年目。何度も転移していますが、今現在も元気に仕事もしているのです。目の前に元気で頑張っているモデルがいることに、とても勇気をもらっています。

ただ、主人にとっては、母も妻も同じ「乳がん」という状況で、とても辛かったと思います。私の死を覚悟し、娘にも話をしたこともあるということを、治療が落ちついた後で話してくれました。気丈に支えてくれていたので、今まで彼の涙をみたのは2回くらいでしょうか。入院中も献身的に支えてくれ、本当に感謝しています。

〈スキンヘッドのお母さん〉            

初めての抗がん剤投与を開始し10日後、髪の毛が抜け始めました。見た目の変化がこれほど苦痛だとは当事者になるまで考えてもいませんでした。ウィッグも用意してみましたが、かぶると副作用の頭痛がひどくなり、長く被ることがストレスになりました。同時に頭皮ケアとも向き合うことになった私は、思い切って剃る決断に。

最初は義母にバリカンで剃ってもらったのですが、やはり後ろで泣いていたようです。スッキリはしたけど、主人に見せる時はすごく緊張しました。でも明るく「じゃーん」と見せると、「似合うね」と言ってくれたのです。惚れ直した瞬間でもありました。ただ、娘は「いやだー!帽子かぶってー!」と目を覆ってしまい、そこから2週間はずっと自宅の中では帽子をかぶるように気をつけていました。「えー、残念だなぁ」と出来るだけ明るく振舞い、また、ありのままの姿を受け入れてもらうように少しづつ話をしていきました。大切にしていたのは、『深刻にしない』ということ。家族で受け入れていくためのひとつの想いでもありました。私自身も変に隠したくなかったのです。仕事を休んでいても、いろんな方と接する中で、伝えている、伝えてないの差を生むことによるモヤモヤが気になっていました。素直にカミングアウトすることで、結果的に保育園やママ友をはじめ、周りにいる様々な方々に支えてもらうことにもつながったと思っています。

<しこり触ってキャンペーン>        

告知から2ヶ月後、「しこり触ってキャンペーン」を開始しました。きっかけは、この病気になってから手にとった本に、いくつかの生きる道しるべが書いてあり、その中のひとつに“直感に従う”というものがあったからです。

命は有限。やりたいことをやろう!

始めると決めるまでは、かなり葛藤もありました。実は母には反対されたのですが、オープンにすることは最大の防御だとも思いました。私が楽になる空間や居場所を広げて、社会丸ごと楽に生きられる場所にしたい。

だからまだ5歳の娘に写真を撮ってもらい、ありのままのスキンヘッドの状態でにっこり笑った私と、「しこり触ってねキャンペーン☆皆さんの元気オーラを私にください!そして乳がんの早期発見に役立てたら嬉しいです。私のしこりを触って是非自分の乳房にはないかを確認してくださいね♡」というパネルを持った姿を、SNSにアップしました。

乳がんはセルフチェックができるがんです。多くの女性に触っていただくことで、自分事として考えて欲しかった。乳腺専門医でも、妊娠授乳期は見つけづらいと言います。だから直に経験者がリアルな情報提供することの必要性を感じました。また、心のどこかで、みんなの手からあふれるパワーをもらって、がんが小さくなったらいいな。がんを刺激すると良くないと分かってはいましたが、その気持ちを超えてやってみたかったのです。

乳房の摘出までの約半年間、延べ250名の方に触っていただきました。お話し会形式での開催などでは、ありのままを認めて、心の底からワクワク生きようという、この病から、学んだ想いをお話しさせていただきました。

その後、乳房の摘出、放射線治療が続き、治療が落ち着いたのは翌年の夏あたりでした。現在も抗がん剤を服用し、ホルモン療法との併用をしています。

<家族への思い>    

          

がんに罹患して以来、家族間のコミュニケーションはとくに大切にしています。中でも、主人との関係が一番変わったかもしれません。主人はとても優しい人ですが、今までは夫婦の会話は子供のこと中心で、なかなかパートナーとしての会話が出来ていませんでした。でもがんになってからは、想いは溜め込まずに、お互い言いたいことは言うことにしています。

「死」を受け入れるというのは、とても大きなことです。だからこそ、内側から湧いてくる思いを受け止めることが、必要だと感じました。お母さんだから、もういい歳だから、仕事があるから、、、そんな外側の自分を縛っていたものからするりと抜け出て、がんになってからは、やりたいことはちゃんと自分にやらせてあげるようにしています。そして主人にも素直にお願いして、甘えるようになりました。これは私なりの愛情表現で、もし万が一のことがあった際の彼の感情の着地点を作ってあげることに繋がっていると思っています。

もし私が先に逝くことになったら、、、「やりたいことをやらせてあげられた」という満足感は、前に進むきっかけにもなるのだと思うのです。

入院中はほぼ毎日病室に来てくれました。色々あっても全てを受け入れてくれた主人には感謝しかありません。身体が辛いと裏返しの言葉を言いたくなることもありますが、常に素直で居続けることが、心地よく生きる秘訣だということも学びました。

そして可愛い二人の娘たち。常に笑顔を振りまいて、私に生きる希望を持たせてくれました。それでも私の病気についてはしっかりと理解をしてくれています。

娘たちのことを考えたとき、『社会をよくしていきたい』という思いが、私の中ではっきりと芽生えました。カミングアウトしても、坊主にしても、ありのままをさらけ出したとき、それを受け入れてくれる社会の基盤を作りたい。しこり触ってキャンペーンも、写真展についても、この気持ちから生まれた行動でした。

子どもが大人になる時代は、もっとがん罹患率が上がっているかもしれません。がんに罹患したからこそできることがある、そう信じています。

そして、「視点を変えてみる」ということも大切だと感じています。

考えてもきりがないことを、うまく切り替える力が必要なときがあります。未来の不安や過去の後悔も一旦おいて、今の幸せ、いまここにフォーカスする。周りがうらやましい自分がいる、でもそんな私も「〇」にする。そんなふうに見方を少し変えるだけで、心が落ち着く自分がいるのです。

医師も様々な経験、考えをもっているのが現状です。罹患していることにすぐに気づいてもらえなかった悔しさはありますが、おかげさまで3ヶ月間は次女を母乳で育てることができました。何事も一番ベストなタイミングであったのだと、自分の中で赦す作業が、前向きに生きる根本になっています。

<全国での開催を目指す写真展>  

      

昨年クラウドファンディングに挑戦し、たくさんの方にご支援いただき、『生きるを伝える写真展』をスタートさせました。『脱毛症』と『乳がんサバイバー』の方々をモデルとした、ありのままの美しさ、そして家族や友人との絆を写した写真展です。この写真展は47都道府県での開催を目指し、福井から始まり、すでに札幌、福岡、東京、神奈川、兵庫、愛知など10都市で開催済みです。

私の想いに賛同してくださり15組の方がモデルになってくださいました。プロの方にメイクをしてもらって、坊主で写真を撮る解放感。「自分のことを初めて受け入れられた」とお話し頂く方の姿は、こちらも熱くなるものがありました。

また、参加したお子さんからも「ママだけじゃなかったんだね~」と笑顔がこぼれました。子どもなりに心にロックをかけて、言ってはいけないことのように捉えている苦しみを、何とか変えていきたいと心から感じる出来事もあり、双方に必要な取り組みであったと再認識させられました

脱毛症は国民の約1%、乳がんは女性の11人に1人が罹患する病気です。

しこり触ってキャンペーン開催時から意識している「サバイバー×ノンサバイバー」。垣根を超え、身近に感じてもらうことを意識しており、病気関係なく、自身の「生きる」ことについて、考えるきっかけになってもらえたらと思っています。がん教育や、意識改革も含めて、現在ミニパネルの方は病院展示や、私の講演と共に小中学校でも展示をさせていただいています。

写真展では、私が講演では伝えきれない想いを、言葉や展示デザインにて伝えています。

「つらいならつらいって言っていい」

「淋しいなら淋しいって言っていい」

「基準は自分のここちよさ」

「どんな色を人生で見ていきたい?」

どんな想いを抱いたとしても、その想いは全て生きているから味わえる大事な感情。あなただけのもの。そこにそれぞれの大切にしているアイデンティティーがあると思うのです。

生きることに正解はなく、そして毎日は選択の連続です。

もし、生き辛さを感じている方がいらっしゃったら、この写真展の15組のメッセージを読みながら、“自分はどう生きたいと思っているのか”自分に問うてみてほしいです。どんな自分も、まずは受け止め認めてあげるところから。

おかげさまで忙しい毎日を過ごしていますが、やっぱりまだ、ふっと不安になることはあります。医師から術前に頂いた書面には、「10年生存率50%」の文字が並んでいました。この響きを、最初は本当に重く受け止めていました。

でも、今は、先の不安にとらわれ過ぎずに、今を生きよう!と、自分自身の心の整え方がだいぶわかってきた気がします。

かわいそう”という目に敏感になっている時は、実は自分が一番自分をかわいそうだと思っているかもしれません。もちろん事実は変わらないし、私も若くしてがんに罹患したことは自分でもかわいそうだと思います(笑)。

でも、そう感じている自分がいるのだと自覚してからは、その感情と適度な距離を取れたり、自分自身を俯瞰できるようになりました。また、自分の姿を写真にのこすという行為は、自分を受け入れ、前に進むきっかけにもなりました。

自分を赦せるのは、自分しかいません。一歩踏み出し、変化を自らに与えたことで、自分の芯がしっかりしてきました。

私自身は乳房の全摘後、全摘アートフォトも撮りましたが、「写真撮ってもらったよ」と自慢できるくらい、これからの社会はフランクに病気と向き合えるといいなと感じています。

当事者にならないと気づかないこと、わからないこと、わかってるつもりだったこと、たくさんあります。届かない人には届かないですが、それもまた仕方ないことで、とりあえず私が楽しんでやれるかを大切に。写真展は私の人生かけての表現なので、楽しみながら全国巡回を目指し、活動していきたいと思います。

             


<プロフィール>
髙橋 絵麻 (たかはし えま)
ヨガインストラクター。二児の母。
福井県坂井市在住。
ヨガスタジオ・レンタルスペース
Living space Atha. 主宰
https://living-space-atha.jp/

2015年10月に右乳がんステージ3aと告知を受け、その約2ヶ月後にはにっこり笑ったスキンヘッド姿と共に「しこり触ってキャンペーン」をスタート。
同時にSNSにてカミングアウト。
乳がん啓蒙を目的とした、しこりに直接触ってもらうキャンペーンは反響を呼び、メディアに多く取り上げられる。
翌年5月の全摘手術までに約250人の方がキャンペーンに参加。
治療中から自己検診の仕方を交えたピンクリボンヨガやお話会を多数開催。同じ病気の方や生き方に不安を感じている方からも、「考え方が変わりました!」との声が多数届くようになる。

現在もヨガレッスンに加え、「お母さん、自分を大切にしていますか?」というテーマのもと様々な場所で講演を行っている。
また最近では、自身の中学での不登校経験をもとにした授業「ありのまま生きる~人は悩む生き物~」や、がん教育も進めている。

●ありのまま生きる EMA TAKAHASHI diary
https://ameblo.jp/mananaoyuilove/entry-12336557599.html●YOGAYOMUコラム
http://yogayomu.com/2016/09/16/ema/

●日本テレビnews every.放送
「若年性乳がんと向き合った家族」
https://youtu.be/SduIsKr8pqY

●福井テレビ『ママは乳がん〜若年性患者たちの今〜』ギャラクシー賞奨励賞受賞作品
FNSドキュメンタリー
https://www.youtube.com/watch?v=kFCfInvqKFM

●生きるを伝える写真展HP
https://ikiru-syashinten.jimdofree.com/

●生きるを伝える写真展PV イシヅカ マコト
https://www.youtube.com/watch?v=NNeG3SFcI60

●2018年5月29日NHK福井放送『生きるを伝える写真展』
https://www.youtube.com/watch?v=wiBPdN8URd8

【TV取材・新聞掲載など】
・日本テレビ news every.
・NHK福井 ニュースザウルス
・FBC 「私らしくあるために〜乳がんと生きる・伝える〜」
・福井テレビ「乳がんと私〜絵麻さんのメッセージ〜」 「ママは乳がん〜若年性患者たちの今〜」
・spotlight ・NHKラジオ放送 ・FM福井 ・中日新聞 ・読売新聞 ・朝日新聞 ・福井新聞
・日刊県民福井
その他、写真展関連でも放送、掲載多数


「命のリレーコラム」繋いで頂いた方々

都鳥伸也氏袴田俊英和尚藤澤克己氏川浪 剛氏浦嶋偉晃氏久保田千代美氏

岩崎順子氏谷 正義氏江口日登美氏岩本ひろ子氏林 静哉氏柳岡克子氏

石黒大圓氏島田妙子氏落水洋介氏 ⇒髙橋絵麻氏

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