映画プロデューサー/映画監督  都鳥伸也氏

「ゆとりとやさしさ」のある社会を目指して

今、僕は双子の兄とともに一本のドキュメンタリー映画を製作中だ。
タイトルは『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』。
15年連続で自殺率が日本1位を記録している秋田県を舞台に、様々な民間団体が大学、行政と連携しながら自殺対策活動に取り組む姿を記録した作品である。

自殺対策というと、今、正に死のうとしている自殺志願者に「死んではいけない」と諭す人たちがたくさん出てきそうな感じだが、この映画で描きたいのはそういう部分ではない。僕は、自殺対策というのは、死のうとしている人に「死んではいけない」ということではなく、苦しんだときに「死」という選択肢が浮かばなくなる社会、「生きやすい社会づくり」ということだと考えている。
そのため、映画では必然的に、間接的に自殺予防につながる活動をしている人たちを撮影することになる。

藤里町の「心といのちを考える会」が行っているコーヒーサロンや地域での飲み会(赤ちょうちんと呼ばれる)の活動も、NPO法人「蜘蛛の糸」による経営者・多重債務者への生活再建の相談活動も、NPO法人「秋田県心の健康福祉会」による、精神障害者への居場所を作る「ユックリン」の活動もみな、“自殺対策”という言葉でイメージすると、ちょっと違うな、と感じられるものかもしれない。
しかし、生きることが億劫になってしまい、行き場がないと感じていた人たちに居場所を作って行く様々な民間活動は、確かに「生きやすい社会づくり」とは何かを教えてくれている。

「生きやすい社会づくり」を考えることは、「安心して死んでいける社会づくり」を考えることではないかと思う。
自殺念慮は未来が怖いというところから発生するという。
未来が怖い=生きることが怖いから、人は自ら死を選ぶ。
つまり、自殺者が3万人を超える日本は、安心して死んでいける社会ではないのだ。

それでは、「生きやすい社会づくり」とは何かということになるが、秋田県では「ゆとりとやさしさ」をキーワードに県民運動を展開している。
自殺対策に「やさしさ」とは、なんとのんびりしていると思われる方も多いかもしれない。しかし、考えてみればやさしく生きることほど難しいことはないのである。
人類史を見てみると、人を蹴落とし、利益ばかりを追求し、戦争や差別を行ってきた負の面が人間にはたくさんある。
やさしさとは、他人に感心をもち、理解をし、互いを認め合うこと。そして、そのやさしさを行為としてしっかり具体にうつすことだ。
それは、人を蹴落とさず、利益ばかりを追求せず、人と争わず、差別せずに生きていくことにつながる。
どうしても、普段、生活していると競争社会に飲み込まれ、やさしい気持ちを失いがちだ。そういった中で秋田県の自殺対策のキーワードが「ゆとりとやさしさ」であったことに僕は感動した。

社会がどん底に落ちていきそうな今だからこそ、「ゆとりとやさしさ」という基本的な言葉から、あらためて社会を見つめていくことが必要なのだと思う。

ドキュメンタリーという表現を通し、少しでも僕たちが感じたこの感動が全国に広がり、多くの皆様とその感動を共有して行ければと願っている。

2012年の公開に向けて、僕たち兄弟の映画製作はまだまだ続く・・・・・・。

※ 記録映画『希望のシグナル』は映画の趣旨にご賛同下さる皆様からの製作協力金(一口5,000円)によって製作されます。『希望のシグナル』サポーターズ・クラブでは、製作協力金を受け付けております。詳しくは以下の公式サイトをご覧下さい。ご協力、何卒、よろしくお願い致します。

「希望のシグナル」サポーターズ・クラブ 公式サイト

「1000年後の未来へ-3.11保健師たちの証言-」公式サイト
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プロフィール
1982年岩手県北上市生まれ
2004年日本映画学校卒業後、双子の兄・都鳥拓也(写真左)と共に、映画監督・武重邦夫氏主宰する『takeshigeスーパー・スタッフプログラム』に参加。地域の文化に根ざした映画の発信を目指し、映画の企画・製作・配給について学ぶ。このとき企画した『命の作法』(小池征人監督)をプロデューサーとして、2005年8月~2008年1月まで約2年半をかけて製作。翌年2009年7月にはプロデュース第2作目となる『葦牙-あしかび-こどもが拓く未来』(小池征人監督)を発表する。『希望のシグナル』では自身初となる監督業にも取り組んでいる。

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「命のリレーコラム」繋いで頂いた方々
都鳥伸也氏⇒袴田俊英和尚藤澤克己氏川浪 剛氏 ⇒

浦嶋偉晃氏久保田千代美氏岩崎順子氏谷 正義氏江口日登美氏

岩本ひろ子氏林 静哉氏柳岡克子氏石黒大圓氏島田妙子

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