病魔は突然に   林 静哉氏

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私は働き盛りの45歳の(2001年)時に難病ALS(筋萎縮性側索硬化症) の告知を受けました。この病名を告げられた時は、まさしく地獄の底に突き落とされた思いで、目の前が真っ暗になり、この世の終わりかと思うぐらいのショックでした。というのは、症状からパソコンで調べてどんなに過酷な病気かを知っていたからです。筋肉が萎縮して動けなくなり、呼吸筋まで進むと呼吸器を付けないと後3年から5年の命だと。

医師は告知を受け絶望していた私に対して、呼吸器を付けるのか付けないのかと、通院の度に判断を迫ってきました。3年から5年の命と告知を受けたばかりの患者に生きるか死ぬかの選択をそこまで早く聞く必要があるのかと嫌気が差しました。また、医師が医学の事を学ぶのは当然ですが、患者の心理についてももっと学んでほしいと切実に思いました。

病は気からとはよく言ったものです。進行性の病気であるにも関わらず精神的に弱かった私は告知を受けてから僅か三ヶ月程で喋り辛くなり、食べ辛くなり、手足が動き辛くなってしまいました。しかし、真綿で首を絞められるが如く徐々に進行するなら返ってこの方が良かったのかもしれません。最後は寝たきりになってしまいましたが、寝たきりになってからの私は喋れない為かひとりでいるのが不安で、四六時中ブザーで妻を呼び続けました。これによって妻は精神的にも肉体的にも疲れ果て、家族から笑顔が消えてしまったのです。

このままでは家族みんながダメになると、妻がある日大胆な提案をしてくれました。なんと私の故郷の潮岬に帰ろうと言ってきたのです。私は帰りたい反面、不安もありました。同じ県内でも和歌山市と潮岬ではかなりの距離があったので、私には帰る自信が全くありませんでした。その自信のなさを大きく上回ったのが、年老いた母や友達に会いたい気持ちでした。親戚は家で待機してくれ、友達は先生を連れて会いに来てくれました。妻の提案してくれた帰省は私に大きな自信を与えてくれ、このことを境に私の気持ちが劇的に変わったのです。
しかし、私の気持ちが変わったのには他にも理由があります。
一つは、まるで歌の文句のようですが、「時間がかならず解決するのよどんなに苦しい出来事だって~♪」ということです。さらにもう一つは、私が発病したのと同年代の時に突然失明した叔父の存在です。叔父は失明したことによってこどもの成長を見る事ができず、孫ができても顔さえわからないのです。幸いにして、私は目には支障がなかったので、息子の成長を見る事ができました。一番辛い病気なんてなく、誰だって自分の罹った病気が一番辛いと私は思います。叔父は常にこんな言葉をかけてくれました。「静哉、ない物をねだるなよある物を喜べよ」と。これを私は、失った機能を嘆くより、残された機能に感謝して生きていけよとの意味に捉えています。

人はひとりでは生きていけない。

人は人生に於いてかならず困った事や辛い事に遭遇するでしょう。そんな時に助けてくれるのが家族であり友達であり何かのご縁で知り合った人達です。実際に私も病気になって家族に迷惑をかけてまで自分に生きる価値があるのかと言った時にお父さんはどんな姿になっても生きていて欲しいと言ってくれたのが妻であり息子でした。この言葉に私は救われ息子の成長を見たくなったのです。

また、パソコン環境を整えてくれ、親指が僅かに動く私の為にスイッチを作ってくれた方や、お世話になった方々そして支えて下さった方々に対し本当に感謝の気持ちでいっぱいです。寝たきりの私にとって外部の人と、ご縁を繋げる手段はパソコンだけであるため、これからも積極的に多くの人達とご縁を繋げていきたいと思います。
このご縁を大切にしつつ、自分にしかできない役割を見つけ、皆さんのお役に立てたらと思っています。

告知を受けた時は感状の起伏が激しくうつ状態になり、とても今の生活等考えられませんでしたが、多くの人と素晴らしい御縁で繋がったいま心からこう言えます。 生きる選択をして本当に良かったと

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プロフィール
林 静哉
昭和30年9月23日和歌山県潮岬産まれ。
昭和53年水産関係の組合に入組。
45歳にてALSの告知を受ける。
昨年の9月に還暦を迎えた60歳。

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「命のリレーコラム」繋いで頂いた方々

都鳥伸也氏袴田俊英和尚藤澤克己氏川浪 剛氏

浦嶋偉晃氏久保田千代美氏岩崎順子氏谷 正義氏江口日登美氏

岩本ひろ子氏⇒林 静哉氏⇒柳岡克子氏石黒大圓氏⇒島田妙子

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病魔は突然に   林 静哉氏 への1件のフィードバック

  1. Takashi Deguchi より:

    拝読しました。同じ地に生まれ、一定期間生きた郷里の知人の人生・生き様はそれぞれですね。その人生は、幸福かそうでないか・・・。生かされたことに感謝しています。改めて自分を見直し、出来る限り前向きに生きます。林さん有難うございます。

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